ここでは、新阪堺電車の運輸従事員採用規程について掲載します。
運輸従事員採用規程1
1930年(昭和5年)6月7日制定 1940年(昭和15年)9月20日改定
第一條 監督ハ監督補車掌運轉手中ヨリ拔擢シ運轉課長ノ上申ニヨリ之ヲ任命ス
第1条(監督の任命)監督は、監督補、車掌又は運転手の中から選考の上、運転課長の上申に基づき、これを任命する。
第二條 車掌運轉手ハ一般應募者ニ就キ左ノ各號ノ考査ヲ行ヒ合格者ハ見習生トシテ採用ス
一、車掌ハ年齡滿十八歲以上四十歲以下ニシテ身長五尺以上體重十一貫以上
二、運轉手ハ年齡二十歲以上四十歲以下ニシテ身長五尺一寸以上體重十二貫以上
三、學力高等小學校卒業程度以上ノ者
四、視聽力正確ナル者且ツ辨色カ完全容姿醜クカラサル者
五、身體健全性質溫順ニシテ穩健着實ト認ムル者
六、禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルコトナキ者
七、禁治產者又ハ準禁治產者ニ非サル者身代限又ハ家資分散ノ處分若クハ破產ノ宣吿ヲ受ケ未タ其債務ヲ完濟セサル者
八、官私ヲ問ハス會テ在職中不都合ノ行爲無ク其勤務成績普通以上ナル者但シ其證明書ヲ要ス
九、自己ノ都合ニ依リ當會社ヲ退キ六ヶ月以上ヲ經過シタル者第六第七ニ付テハ市區町村長ノ證明書ヲ差出サシムベシ
第2条(車掌および運転手の採用)車掌及び運転手は、一般の応募者に対して下記各号の事項について考査を行い、これに合格した者を見習生として採用する。
1. 車掌は、年齢18歳以上40歳以下で、身長5尺(151cm)以上、体重11貫(41.3kg)以上の者であること。
2. 運転手は、年齢20歳以上40歳以下で、身長5尺1寸(155cm)以上、体重12貫(45.0kg)以上の者であること。
3. 学力が高等小学校卒業程度以上であること。(現在の中学校卒業程度以上の者)
4. 視力および聴力が正常であり、色覚に異常がなく、かつ容姿が著しく不適当でないこと。
5. 身体が健康であり、性格が温厚にして穏健かつ着実であると認められること。
6. 禁錮以上の刑に処せられたことがないこと。
7. 禁治産者または準禁治産者でなく、身代限または家産分散の処分を受けた者、もしくは破産の宣告を受けて未だ債務を完済していない者でないこと。
8. 官公庁または民間を問わず、在職中に不都合な行為がなく、勤務成績が普通以上であったこと。ただし、その証明書を提出すること。
9. 自己都合により、当社を退職し、6ヶ月以上経過した者、第六号、第七号については市区町村長の証明書を差し出させる。
第2条の7項については、そのまま現代語訳すると、身代限以下が「身代限または家産分散の処分を受けた者、もしくは破産の宣告を受けて未だ債務を完済していない者」となりますが、全体の意味を考慮し、上記の現代語訳としています。
高等小学校卒業は、現在の中学校卒業程度じゃよ。
第三條 見習生ニ採用スル者ニハ身元保證人二名連署シ、會社指定ノ誓約書ニ保證金拾圓ヲ添ヘ會社ヘ提供セシム
第3条(見習生採用時の提出義務)見習生として採用する者には、連帯する身元保証人2名を立てさせ、会社所定の誓約書に保証金10円を添えて、会社に提出させるものとする。
第四條 車掌運轉手見習生ニハ手當トシテ日額五拾錢ヲ支給ス
第4条(見習生の手当)車掌及び運転手の見習生には、手当として日額50銭を支給するものとする。
第五條 見習期間ハ三ヶ月以內トス
第5条(見習期間)見習期間は、3か月以内とする。
第六條 見習所定ノ敎習ヲ了ヘ實務試驗ニ合格シタル時ハ各其本務ニ採用ス
第6条(本務への採用)見習生が所定の教習を修了し、かつ実務試験に合格したときは、それぞれ本務に採用するものとする。
第七條 轉轍手、信號人、線路番人、雜役夫ハ年齡十五歲以上ニシテ第二條第四號以下ノ各號ニ該當シタルモノヲ考試ノ上採用ス但學力ハ尋常小學校卒業以上又ハ其レト同等以上トス
第7条(転てつ手等の採用)転てつ手、信号係、線路番人及び雑役夫は、年齢15歳以上であって、第2条第4号以下の各号に該当する者のうち、考試の上、これを採用するものとする。ただし、学力は尋常小学校卒業以上又はこれと同等以上とする。
尋常小学校卒業は現在の小学校卒業程度じゃよ。
参考文献
- 大阪市公文書館所蔵,『阪堺電車株式会社報告・届書類綴』昭和14年~昭和15年,配架番号12041を転載した。 ↩︎
この運輸従事員採用規程は1940年(昭和15年)9月25日付、発第223号、新阪堺電車社長発、大阪鉄道局監督部長宛、『地方鐵道軌道及專用鐵道乗務員採用内規提出方ノ報告』に添付されていたものです。